私たち人類はどこに向かうのか

2022年2月24日には、ロシアがウクライナに軍事侵攻。

いったい世界では何が起きているのでしょうか。こうした時は、歴史的文脈で全体を鳥瞰して観る必要があると思います。

京都大学名誉教授の佐伯啓思氏は、

「この暴挙の背後には、西洋との内的な葛藤を孕みつつ、社会主義による近代化を遂行し、しかもそれに挫折したロシアやウクライナの苦い歴史的事情が存在するのである。むしろ真の問題は、冷戦以降の世界をまとめるはずであった米国中心の西洋的価値や世界秩序構想の破綻にこそある。リベラルなデモクラシー、グローバルな市場競争、個人の基本的権利、主権国家体制、ユートピア的思考を持った歴史観、米国の覇権による世界秩序。こうした近代的価値がうまく機能しないのである。」

と語っています。

二大近代主義が崩壊したのだとすれば、いったい私たち人類はどこに向かおうとしているのでしょうか。

表層で起きていることに目を奪われず、感性を研ぎ澄まし深層を探らなければなりません。さもなければ、世界が再び東西に分断されることは容易に起こり得ますし、まかり間違えば核戦争の恐怖に陥ることにだってなりかねません。

 

問われる文明のあり方

今起きていることは、「グローバル資本主義と気候変動・感染症によるシンデミック」であると考えます。

シンデミックとは「シナジー(相乗効果)」 と「エピデミック(疫病の流行)」を合わせた言葉で、人々が 2つ以上の病気を同時に発症し、それらが相互に作用することで病状が悪化し、さらに「社会的・経済的・環境的要因」によってそれが助長され、そして拡大・流行することです。

グローバル資本主義の暴走の末に、世界的に格差が拡がり、地球環境の破壊によって、気候非常事態や新興感染症が出現しているのです。

作家の五木寛之氏は、2021年11月、現代を「断末魔のきわどい時代」と言い表し、「文明の進化が希望として語られてきた時代から、文明の悪が自覚される時代になったのではないか」(日経新聞のインタビュー)と語っています。

まさに、人類は文明のあり方そのものが問われているのです。山積するグローバル・アジェンダに私たちは、党派を超え、国家を超え、地球規模で取り組まなければなりません。襲い来る最悪の事態にも動じず、これらの諸課題に向き合い、進むべき新しい文明への道筋を見出さなければなりません。

そうすることで、この国は揺蕩えども決して沈まず、前に進んで行くことができるのだと思います。